フリーライダーはなぜ発生するのだろうか。 答は簡単、「フリーライダーは得になる」からだ。 そう、合理性のみを考えるならば、できるだけ仕事はしない、押し付けられるものは全て他人に押し付ける、他人の成果は横取りする。あらゆるタダ乗り行為をする方が、個人にとっては得になる。 (一昔前の)経済学的な考え方からすると、全ての社員は「①得になる限りタダ乗りするのは当然」ということになる。 しかし、それでは会社組織は成り立たない。少なくとも、経営層や管理職には自分たちの社員や部下をタダ乗りさせないようにさせるインセンティブ(注1)が必要だ。 実は「株式会社」という制度は、そのようなインセンティブを経営者に提供するようにできている。株主は自らの利益のために、有能な経営者を求め、経営者は自分のクビを守るために、社員がタダ乗りしないような経営をしようとする。 このように、株主からのプレッシャーがあれば、経営者は自ずとタダ乗りを防ぐような工夫をするようになっている。 では、どのような工夫が必要か。最も有名でしかもシンプルな考え方は、「タダ乗り社員はクビにする」というものだ。 経済学者のカール・シャピロとジョセフ・スティグリッツは、②この前提のもと、「個人がタダ乗りを働こうと思わない、最低レベルの賃金」を企業が支払えば、タダ乗り問題は論理的に防げると論じた。 2人のうち、スティグリッツは2001年にノーベル経済学賞を受賞したことでも知られ、現在最も影響力の強い経済学者の1人である。 彼らの考え方は、「タダ乗りを働いてクビになる→ある確率で再就職」という生き方と、「タダ乗りを働かない」という生き方を比べて、後者の方が得になるならば、③個人はタダ乗りしないはず、というものである。 そのためには、企業はたくさんの給料を個人に支払えばよいが、その金額をできるだけ低く抑えることも必要となる。その金額が上記の「最低レベルの賃金」であり、これを「効率賃金」と呼ぶ。彼らはできるだけシンプルな前提から、効率賃金を予測する数学モデルを作ったのである。 これ以上詳しい話をすると、経済学の講義になってしまうので、深入りは避けるが、タダ乗りに関して、彼らのモデルの重要なポイントを挙げると以下の2点になる。 ・ タダ乗りが見つかった社員は、必ずクビになるという前提を持つ ・ 一度クビになった社員は、ある程度の確率で再就職できるが、それが低いほど、企業が払うべき賃金は少なくて済む これは、「シャピロ-スティグリッツモデル」、あるいは「効率賃金モデル」と呼ばれる有名な研究だが、現在の日本の状況についても、ある程度示唆(注2)を与えてくれるものだ。今の日本の職場で起きている大きな問題は、「フリーライダーがきちんと処罰されない」ことにある。上記モデルの大前提が満たされていない。 (注1)インセンティブ:物事を行なう意欲を向上させる動機のこと (注2)示唆:それとなく教えること 1 ①「得になる限りタダ乗りするのは当然」とあるが、どうしてか。 1 社員は最小限の労力で最大限の利益を得ようとするはずだから 2 経営層や管理職による指示なしには社員は動きようがないから 3 合理性を追求する行動は社員全員に認められた権利であるから 4 株主によるプレッシャーがあるとタダ乗りができなくなるから 2 ②「この前提」とあるが、どのような前提か。 1 フリーライダーを解雇するという前提 2 タダ乗り問題は解決できるという前提 3 タダ乗りには対策が必要だという前提 4 経営者が様々な工夫をするという前提 3 ③「個人はタダ乗りしないはず」とあるが、なぜそういえるのか。 1 誰もがより良い生き方をしようとするはずだから 2 得にならない選択をあえてするとは思えないから 3 もともと働いていなければクビにもならないから 4 再就職をすることが難しい制度になっているから 4 この文章で筆者が主張していることを以下の文のようにまとめるとき、下線部には何が入るか。 フリーライダーが発生するには理由がある。それは、______ からだ。 1 企業の最低レベルの賃金が高すぎる 2 フリーライドが許される環境にある 3 会社に有能な経営者や社員がいない 4 タダ乗りが見つからない場合が多い